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田中大臣! 基地の返還交渉をしっかりやってください
5月31日   実録 外交・防衛委員会

斉藤つよしは、前日の予算委員会に引き続き、外交・防衛委員会で約40分間、中谷防衛庁長官と田中外務大臣との質疑を行いました。
以下、会議の模様をご紹介します。質疑は翌日の「沖縄タイムス」と「琉球新報」に大きく報じられました

★問題だ  アメリカの研究所が沖縄の米空軍増強と下地島使用を提言

斉藤つよし
 最初に、防衛庁長官にお伺いをいたします。
 私の手元に五月十五日付の毎日新聞の夕刊がございます。アメリカの国防総省の委託を受けた有力シンクタンクのランド研究所の「米国とアジア」と題する新戦略報告書、この中で沖縄の米空軍増強、とりわけ空軍基地としての使用ということで下地島空港が挙げられております。最初に、このランド研究所の「米国とアジア」と題する新戦略報告書の概要について教えていただけますか。

○国務大臣(中谷元君)沖縄の空軍におきまして下地島における訓練をする、また海兵隊を削減するという点等、報道によって承知をいたしておりますが、事実認識関係は以上でございます。

○齋藤勁君 国防省からこの報告書についてのコメントとかやりとりはされていないということですか。

○国務大臣(中谷元君) もちろんそうでございます。
 これはアメリカの空軍が委託をしたことでありますし、またアメリカ政府も、アメリ
カ大統領の指示による包括的国防見直しとの関係はないというふうにコメントいたしておりまして、当然我が国とは全く無関係のものでございます。

○齋藤勁君 そうすると、今後、この報告書が国防省の中で検討され、そして日米の関係で取り上げられ協議の対象になるという性格ではないということでよろしいんですか

○国務大臣(中谷元君) これは全くアメリカ政府が考えることでありまして、日本でこの問題についてどうのこうのと言うべきものでもございません。

○齋藤勁君 この一月前、四月十七日に沖縄県の伊良部町議会が、自衛隊機の訓練をしてほしい、こういう誘致の決議を全会一致でされていると、またこれも報じられております。
 伊良部町から長官のもとにこの誘致決議以降いろいろ要請活動がされていると思いますが、要請の内容と、長官はどのようなこれに対する答えをされたのか。

○国務大臣(中谷元君) 地元沖縄県の伊良部町長並びに議会の代表の方が来られまして、自衛隊機の下地島空港への訓練誘致について議会の全会一致で決議をいたしましたということで要望をいただきました。それにつきまして私といたしましても、今後地元の意向を踏まえて検討をしていく旨の発言をいたしました。

○齋藤勁君 この空港についてはかねがね、かつて琉球政府時代からいろいろ政府との関係で使用の問題について約束がされていると思いますが、その経緯を十分承知をされていますよね、

○国務大臣(中谷元君) この件につきましては、昭和四十六年に当時の琉球政府から、同空港を民間航空訓練及び民間航空以外に使用させる意思はない等について日本政府として照会を受け、これに異存ない旨回答しておりますし、昭和五十四年に下地島空港を自衛隊等の軍事目的には絶対使用させない旨の決議を行っております。
 その経緯は十分知っておりますが、事前に私も地図を広げて見てみますと、非常に宮古・八重山地域は海域が広くて、防衛上も非常に重要な地域ではないかと思っております。また、災害とか救援搬送など、緊急事態には那覇から行っているということで、聞いてみますと、一時間近くかけて那覇空港から宮古島まで、また石垣島まで患者搬送をしに行っております。片道一時間です。
 この緊急患者搬送というのは、地元の自治体の要請に基づいて、事故とか災害また病気で地元の病院で対応できない方を自衛隊機をもちまして那覇まで緊急送迎をするということでございますが、この二カ月、四月、五月だけでも先島諸島においては、石垣、宮古、西表また与論島がございますけれども、これだけでも七件ございます。
 また、年間を通じますと、地元の航空基地がいわゆる患者搬送、緊急搬送をするのは年間約百六十件ございまして、これを考えてみますと、那覇から宮古とか八重山に行くのに一時間かかる、そして帰ってくるのにも一時間となりますと、緊急、急病人等が一刻も争うときに、やはりもう少し近くにそういう緊急事態に対して搬送できることができないものかと思いまして、こういうところにも離発着できるものがあれば、さらに国民や沖縄県民の方々にサービスができるんじゃないかと思っております。
 しかし、その前提が、この沖縄の決議がございますので、当然県の管理する空港でございますので、沖縄県を初め地元の皆様方の御要望に沿ってやっていきたいというふうに思っております。

★米軍のヘリ使用を島民はのぞんでいない

○齋藤勁君 この下地島につきまして、町の方からの防衛庁に対する自衛隊の訓練としての誘致、これは事実だと思います。
 しかし県の方は、民間空港であり、軍事目的の使用があってはならない、空軍は広大な嘉手納基地を抱えており、これ以上の施設は必要ではないというコメントをしている。
 それが、四月二十七日、二十八日朝、フィリピンのクラーク基地に向かうということで、沖縄に駐留しています海兵隊の普天間基地から軍用ヘリ、給油機、十三機、合同演習に参加する途中、沖縄県からは自粛要請を行っているにもかかわらず着陸した。往路、帰路。これらの在沖米軍機が空港に飛来するのは九八年の緊急着陸以来三年ぶり、給油目的に限ると九二年以来九年ぶり。あるいは、もう一つは、在沖縄米国総領事が四月二十二日にこの下地島を視察しております。
 長官の答弁では、これはアメリカのシンクタンクがやったことで、日本政府はあくまでも関係ない、そして、これは日米の協議にならないだろうという。しかし、どうも経過を見ている限り、これらの何年ぶりと言われる、しかも最近は緊急着陸した以外にないこの普天間の軍用ヘリ、給油機の着陸というのは、加えて総領事の視察を含めて、アメリカの沖縄への全体的戦略目的で動いていると見た方が当然ではないですか。

○国務大臣(中谷元君) この飛行場の使用の問題につきましては、これはフィリピンにおける訓練に参加するため、移動途中の四月二十八日、五月十六日に下地島、波照間空港をヘリコプターへの燃料補給のために使用したいということで、沖縄県の条例に基づく所要の書類を沖縄に提出をしまして、その後、県から米軍に使用の自粛要請を行うとともに艦船による代替措置の検討を求めてこられました。それを受けまして米軍は、それを検討した結果、それではとり得る代替措置としては不可能であるということで再度、空港を使用したい旨、米軍から沖縄に伝達をしたものと承知をいたしておりまして、基本的に、そういう戦略の一環があってフィリピンで訓練をされたのかどうか、私も確認のしようがありませんが、これは物の見方の問題だと思います。

○齋藤勁君 フィリピンとの訓練は、訓練で前から計画があったと思います。あるいは、シンクタンクの方は、急にこの時期に発表されたんじゃないと思う。この下地島に着陸をする、それから在沖米国総領事が視察をするというのは、これは別に偶然ではないと思いますよ。これはやっぱり事実上使用していくということですね。
 それから、総領事そのものが視察をして、当然シンクタンクのこの報告書が出ているわけですから、アメリカ側はそういう伏線、そういう流れで来ている。
 片や我が国としては、全会一致で、例えば中谷長官にこの自衛隊訓練誘致を要請した伊良部町長は、自衛隊も米軍もというわけにいきませんよ、我々は自衛隊の誘致をお願いしているんだと。県民は米軍基地の整理縮小を望んでり、問題外だということを言われているわけです。
 振興という非常に深刻な意味で町の人は考えているのですが、この伊良部町の思いと、そして余りにも巨大な米側の方の戦略、それに伴って我が国の政府、これがどうもちぐはぐですね、どういうふうに理解したらよろしいんですか。

○国務大臣(中谷元君) 基本的には、このような問題はまず地元の皆さんの御理解と御要望が第一前提だと思います。したがいまして、下地島空港における我が自衛隊の問題につきましては、地元の皆様方の御要請、御要望、御決定を第一に考えていきたいというふうに思います。

○齋藤勁君  繰り返しますけれども、町長は、空港活性化、自主財源拡大、那覇空港の過密化などに伴う安全性、しかも米軍ということについては一切考えていないという。これはやっぱりメッセージを早く米側に伝えなきゃならない。幾ら視察に来たって日本政府の方は考えませんよということを早目に伝えなきゃならない、アメリカ側もちゃんと用意周到でやっているわけですから。

○国務大臣(中谷元君) 何事も、地元沖縄の地元の町長さんが代表されての御発言でございますので、そのことを第一に考えて行動してまいりたいと思います。

○齋藤勁君 くどいようですけれども、日本政府としてアメリカ側の方がこのシンクタンク、ランドによる報告書並びにいろいろ視察をされてみても、地元の意向そして日本政府として、米側の方の使用については政府としては考えない、そのことについては米側に伝えるということでよろしいですか。

○国務大臣(中谷元君) 今のところは一切そのようなことは考えておりませんし、米側に対しましても機会を見つけましてお伝えしたいと思います。
 

(田中大臣 予定時刻より五分間遅刻  その間委員会全体で待つ)
(田中大臣 着席後、斉藤質問中も、秘書官と話していて落ち着かない)


★沖縄海兵隊の撤退を

○齋藤勁君
 外務大臣、日米会談で普天間移設十五年問題、これはどういう姿勢で臨まれますか。

○国務大臣(田中眞紀子君) お答えする前に、衆議院本会議答弁がございまして遅参いたしましたことをおわび申し上げます。
 普天間の問題ですが、私は就任のころから、できるだけ早くに訪米をして、そしてフェース・ツー・フェースでアメリカが、安全保障の問題ももちろんですけれども、そのほか日本との関係においてどういうお考えを持っているか聞いてみたいということを思っておりましたので、今現在スケジュールの調整をしていただいております。
 そして、普天間の移設の問題でございますけれども、地元の皆様からの御要望もありますし、それから沖縄県知事及び名護の市長さんからの要請というのもございますので、こうした思いを非常に重く受けとめまして、そして今後、国際情勢の変化に対応しながら、どのようにしてこういう問題に対処していくべきか、できるだけ国際情勢全体が肯定的に変化していくようにもちろん努力をするというスタンスが基本にございますけれども、率直な意見交換をしてまいりたい、かように思っております。

○齋藤勁君  報道で、外務大臣が午前中の衆議院の会議で、アメリカに、沖縄の海兵隊の撤退、ハワイあるいはグアム等に配備の転換ができないんだろうか、こういうことを外務大臣として政府に働きかけるということを答弁したということが報じられていると思いましたけれども、これは事実でしょうか。

○国務大臣(田中眞紀子君) はい、そうです。事実でございます。

○齋藤勁君 大臣、再度、本院のこの委員会で海兵隊のアメリカ側との協議をする姿勢に
ついて詳しく御説明いただけますか。

○国務大臣(田中眞紀子君) 正確を期するために、ちょっと済みません。
(秘書官 書類を出すのに手間取る)
 海兵隊の、きょう午前中申し上げたことですけれども、グアム、フィリピンへの移転、これにつきましては、沖縄にあらゆる施設が集中してしまっているということ、そして大変大きな負担を沖縄県の皆様に強いているということ、やはり沖縄県の痛みは私たち国民みんなが意識をしなければいけない問題であるというふうに私は思っておりますので、それを踏まえまして、海兵隊の移動、移転というふうな問題ですとか、それからSACOの問題、これはいつも答弁を申し上げているように、最終報告の着実な実施ということでありますけれども、やはり基本的には県民の皆様の負担を軽減するというスタンスでどこまで現実に機能するものか、具体的なケースを出してパウエル長官の御意見を伺ってみたい、かように考えております。

★田中大臣! 海兵隊撤退へ具体的な交渉を進めよ

○齋藤勁君 国会の議論の中でも、私自身もこの間、歴代の大臣あるいはいろんな委員会の中でしたことがございます。しかし、どうもガイドライン以降、今の田中外務大臣のような具体的な姿勢については、私は見きわめられませんでした。ある意味では、私は、アメリカと率直に具体的に海兵隊の撤退に向けて、話し合いをされることについては評価をしたい。 SACO合意がされてもう何年もたちます。きのうときょうの答弁の中でも十五年問題について、これもまた外務大臣として訪米した際に提起をして話し合ってくるということですから、ぜひ忌憚のない意見交換をしながら実現に向けてほしいと思います。

○国務大臣(田中眞紀子君) 私もそのように思っておりますし、多くの国民の皆様が思っておられるように、やはり成熟した日米関係というものが、日本の経済力も世界で第二位になりましたし、そして国民の皆様の受益と負担に関する意識も非常に高まってきているというふうに思いますので、そういう皆様の声も踏まえながら、現実問題としてどれだけお話し合いができるのか、全部はかなわないかもしれませんが、少なくとも何を私が外務大臣として負託されて来ているか、そのことについては明確に、胸襟を開いて、まあどのぐらい時間がいただけるのか、先方さんから逆にいっぱいお話しなさるのか、私は無口だからわかりませんけれども、できるだけ頑張って日本のスタンスは伝えてまいります。

★池子の住宅地区と富岡倉庫地区の返還を

○齋藤勁君
 日米地位協定問題にかかわることで米軍施設の返還問題について一点。
 田中外務大臣が着任する前、河野外務大臣のときに、横浜の富岡倉庫地区並びに横浜と逗子にまたがる池子住宅地区及び海軍補助施設の返還問題について、日本政府の姿勢、米側とのやりとりの状況についてお伺いいたしました。北米局長とは大分時間を費やし、最後には外務大臣から検討しますということを言っていただいたんです。
 使用されていないのに日米合同委員会に返還について提起をしない、そして、地元の自治体からも議会からも再三返還の申し入れがある。
 日米地位協定の二の三、「合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなつたときは、いつでも、日本国に返還しなければならない。合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討することに同意する」。目的のため必要でなくなつたときは日本国に返還しなければならない。さらに、合衆国は、「返還を目的としてたえず検討することに同意する。」と。日本政府に対して、「施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討することに同意する。」というのが現行地位協定の条文の内容です。
(資料を示す) この大きい写真なんですが、真ん中の海部分の約正方形の部分、そして黄色い点線で背後地、高速道路をくぐりまして大きな土地に入りますが、これは横浜市の港湾局の管理している土地です、黄色い道路部分というのは。前後の土地が、これがいわゆる富岡倉庫地区です。
 それから、旧弾薬庫が、今住宅になりましたけれども、池子住宅地区及び海軍補助施設、ちょうどこの緑地の部分の中間部分が今の住宅地区でございます。背後地が緑地でして、上部の、赤ではなくて、そちらの方の資料にはブルーの線で囲っていると思いますが、ここは横浜市域分です。
 使っていない。地元も返還の申請をしている。ところが局長は、アメリカが使っているんだという。使っている、使っていないということをやりとりいたしまして、最後に当時の外務大臣が、検討しますということで別れている。
 新大臣になりました。私は、現行地位協定の二条の三項に基づいても、現実に使っていない、自治体からも申し入れがある。合同委員会に提案をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(田中眞紀子君) 過去のことも含めて、正確を期するために事務方からの答弁でよろしければいたしますが。

○政府参考人 外務省北米局長(藤崎一郎君) お答え申し上げます。地位協定につきましては、今、齋藤委員がおっしゃったとおりの規定でございます。私どもは、この地位協定の規定に従いまして、そしてまたその精神に従いまして対応してまいりたいというふうに思っております。
 御指摘の各施設・区域につきましては、前大臣より、この委員会での国会答弁を受けまして、施設・区域の現状につき調査するよう私どもにも指示があったところでございます。引き続き、私どもといたしましても、関係各省庁とも協議の上、現状を把握しつつ、先ほど申し上げましたように、地位協定に従いましてきちんと対応してまいりたい、こういうふうに考えております。

○委員長(服部三男雄君) もう質疑時間は終了していますから。

○齋藤勁君 じゃ、一点だけにします。
 私の質問は、具体的に地域名を申し上げているわけなんで、だから、きょうこのカラーコピーとかを理事会の御協議、了解を得て図で説明させていただいたんです。ですから、富岡倉庫地区、池子地区、これらについては具体的に返還の申し入れ、これは地元から出しているわけですから、そのことについて答弁がないというのが一つ。
 それから、もう一つは、大臣、この間、私どもは地位協定改正を政府にも提出しています。このことについてこの間の議論では、民主党の案もあるというふうな受けとめ方をしているという答弁もございますが、地位協定改正に向けて、大臣、政府としても積極的に取り組んでいくということでよろしいですね、受けとめ方として。

○国務大臣(田中眞紀子君) 地位協定の改定につきましては、とにかく機敏に対応するということが基本というふうに思いますので、運用を改善していくということでございますけれども、それでも効果がなければ改正も視野に入れる、前回もそのようにお答え申し上げたと思います。

○齋藤勁君 局長、さっきのを具体的に言ってください。

○政府参考人(藤崎一郎君) 今、御質問のございました池子及び富岡の倉庫地区、この二つについての御質問でございますが、先ほど御答弁させていただきましたとおり、委員御指摘のとおりの地位協定の規定に従いまして適切に対応したいというふうに考えており
ます。
(この日、他の委員からも、池子地区の返還問題が話され、田中大臣が事務方に報    告をあげるよう指示しました。)