私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま報告のあった米原子力潜水艦によるえひめ丸沈没事故に関する政府報告について、そしてあわせて、三月十九日に行われた日米首脳会談について、総理と関係大臣に質問をいたします。
冒頭、二月十日に起こったこの痛ましい事故により、いまだに行方の知れない九名の犠牲者の方々が発見されるよう祈念し、御家族、関係者の方々に心からお見舞いの言葉をささげるものであります。
民主党は、二月十六日から二十三日までハワイとワシントンに調査団を派遣し、調査活動と申し入れを行ってまいりました。その活動を踏まえて質問をいたします。
さて、このたび総理は訪米をされ、ブッシュ新大統領との首脳会談をしてこられました。二十一世紀初頭、国際情勢が揺れ動く中で、日米関係はますます重要になっていると考えます。しかし、それにしても、なぜこの時期に行われたのか、事実上退陣表明した森総理が訪米して国益が守れるのかというのが率直な国民の感想だということを申し上げます。
まず、総理に伺います。
今回の痛ましい事故の原因は現在米側で明らかにされる手続が行われておりますが、その原因は何だったのか、責任の所在がどこにあるのか、政府としてどのように認識していますか。そのことは今後の政府としてのアメリカ合衆国に対しての交渉にかかわってくるので、まず伺います。
次に、事故の報告を受けて日本側のとった緊急対応について、総理は、危機管理ではなく、事故でしょう、相手がたまたま米国の原潜だっただけと言われたと報道されています。その時点で情報が不十分であっても、米国の原子力潜水艦と我が国の実習船とが衝突し救助しているという情報を聞いた段階で、国政に責任を持つ方であれば、乗船者は大丈夫か、死傷者はいないか、どのような原因か、放射能などは大丈夫か、米政府との対応はどうするかと、次から次へと考え、ゴルフどころではないと私は思うのです。それを総理は平気でゴルフを続けられた。国民は、国の最高責任者が国民の生命、安全に対してむとんちゃくであることに大変な憤りを感じたわけです。現時点で総理はどうお考えなのか、この場で国民に対して危機管理の対応について率直に謝っていただきたい。
事態がどれほど重要な、重大な状況であるのか、危機的な状況であるのか、そういう情勢判断を迅速にし、その上、的確な指示を下さなくてはいけない。いかに立派な設計図も、そこに携わる人の自覚と責任感と意思がない限り、全く機能しないし、何一つ実行できないのではありませんか。
総理、外務大臣、官房長官、危機管理担当大臣にお伺いいたします。
今回のえひめ丸事件から何を教訓として得られましたか。その結果、危機管理に関して政府としてどのような改善策をおとりになりましたか。まだとっておられないのであれば、どうされようとお考えですか。事故、災害は政府や政治家の都合を待ってくれません。ぜひお考えをお伺いいたします。
さて、査問委員会ではワドル艦長の証言が行われ、次々と新たな事実が明らかになってきました。同委員会においては、公開、公正の姿勢であらゆる真実が究明されることこそ、今回のような悲劇が繰り返されないためにも極めて重要であると考えます。
こうした作業を踏まえ、えひめ丸の船体引き揚げの具体的見通し、あわせて、家族、関係者への補償はどのように解決が図られるべきか、その交渉の今後のあり方について、総理並びに外務大臣に明らかにしていただきたいと思います。
日本国民の生命、安全を守る政府として、今回の被害者の方々への支援、補償等がしっかりなされるよう図っていかなくてはなりません。法的解決においても、米国の司法手続を尊重するにせよ、民間人の関与もあり、さらに、この事故がもし我が国領海内であったらどうだったか、米国でなかったらどうであったかなども考慮し、普遍的な正義、公正の視点から、米国に対し言うべきことは毅然として言っていくという姿勢が大切かと思います。総理、外務大臣は、政府として米国に対し今後どのような折衝をされるのか、また被害者の方々に対してはどのような対策をお考えか、その所見をお伺いいたします。
再発防止策について、総理、外務大臣並びに防衛庁長官にお伺いいたします。
二十年前、鹿児島県沖で米原子力潜水艦ジョージ・ワシントンが貨物船日昇丸に衝突、沈没させた事故がございました。原子力潜水艦は頻繁に佐世保、横須賀、沖縄など我が国の基地を出入りしております。日本近海で唯一米潜水艦の訓練水域に指定されている神奈川県相模湾の訓練区域は、漁業に適しており、またプレジャーボートが多数行き交う海域ですが、米原潜が訓練を行う際はその時期や場所など一切の情報は公表されないため、今回の事故で関係者は大変不安を覚え、沿岸各自治体議会で今月中にも国への意見書の決議を提出する、そういった声が上がっております。
さらに、今回のような米原子力潜水艦による民間人を含む体験航海が、我が国の横須賀基地においても過去五年間で十一回も実施されてきたとの報道を考えますと、このような事故が日本近海でも起きかねないからであります。
日本政府は、米政府に対し、訓練区域の見直し、日本近海では訓練の事前通告を行う、緊急浮上訓練は行わないなどの再発防止策を強く迫るべきと考えますが、日米首脳会談で総理はそのような申し入れを行ったでしょうか、具体的にお答えいただきたい。
また、外務大臣及び防衛庁長官は、我が国として今後どのような対応をとるべきかとお考えなのか、お尋ねいたします。
御承知のとおり、ブッシュ政権の外交・安全保障担当のトップ人事からも明白なように、米国はこれまで以上に日本重視を打ち出しています。あわせて、金正日朝鮮労働党総書記の訪中、プーチン大統領の訪朝、金大中大統領の訪米など、極東情勢をめぐるさまざまな動きがある中、米国は中国、北朝鮮へのクリントン政権よりはるかに厳しい姿勢を示すとともに、TMD、NMDの積極的な方向を出すなど、我が国にとって極めて大きな影響を及ぼす可能性のある変化が見てとれます。また、四月には、米国は台湾に対する武器輸出について新たな決定をしていくと見られます。
こうした中で首脳会談は行われたわけですが、総理、国の最高責任者同士が会談するということは大変なことです。今回、会談に臨む総理の姿勢に根本的な問題があったと言わざるを得ません。
ブッシュ大統領と会談して、何を得ようとして訪問したのか、国民に何もメッセージは伝わってきませんでした。アメリカに対しても同様でした。総理は事実上退陣表明をし、諸外国もそのように認識していました。訪米日程を政局に絡め、政権の延命に利用したとの認識を私も含め多くの国民が持っているんではないですか。また、自民党内部にも訪米花道論も言われていたんではないでしょうか。アメリカのマスコミでも、やめていく首相とブッシュが会っても時間のむだではないかとの論評がされました。
たまたまアメリカ経済に陰りが出て株が下がった途端、日本経済にその原因を求め、総理に注文をつけるという態度に米国が出たというのが、今回の訪米をめぐる客観的な日米の関係ではなかったんですか。総理は日本国民の代表として何をブッシュ大統領に伝えようとし、交渉で何を得ようとしたのか、このことを明らかにしていただきたい。
そして、会談内容を明らかにしていただき、原潜事故について大統領はどう謝罪し、何を約束したのか、改めて伺いたいと思います。
総理、あなたのあいまいな姿勢は交渉の隅々にあらわれているんです。基地をめぐるトラブルに苦しみ、沖縄県が切実に願い、民主党からも提案している基地をめぐる日米地位協定の改定を提案せず、総理は共同声明で単に運用の改善という言葉を使い、基地問題を解決していく課題を後退させてしまっています。沖縄基地の十五年使用期限問題も、本気で談判しようという気迫がありませんから、ブッシュ大統領の「困難な問題だ」の一言で後が続かない。一体、沖縄県民の真剣な要求を受けとめているんですか。
総 理並びに外務大臣は、地位協定改定と基地の使用期限問題をこのまま放置しておいてよいと考えているのか、お答えいただきたいと思います。
さらに、総理は、米国のミサイル防衛計画に理解を表明し、有事法制の法制化を国会での議論を踏まえないで約束してきたようであります。これは日本国民の代表の姿勢として問題があると言わざるを得ません。これで総理は訪米目的が達成されたと考えているんですか。
さて、日米首脳会談の主たる議題となった経済問題についてお尋ねをいたします。
会談の中でブッシュ大統領は、邦銀の不良債権問題について日本が全力で取り組んでいないとの見方が米国内にあると懸念を示し、早期処理を強く要請しました。総理は、対応を急ぐ方針を強調し、共同声明においても、我が国が不良債権の問題に効率的に対処することを含め、日本経済の再生、金融システム強化のための構造改革、規制改革を促進することが明記をされました。この内容自体は我が民主党が従来から主張してきたことであり、当然のことでございますけれども、あなたの発言は表向きのポーズでしか見えません。本気で取り組む姿勢があるんですか。
この間、不良債権処理を先送りしてきたのは、まさに我が国の政府・自民党、与党自身じゃないですか。国民に向け不良債権の早期処理と財政再建のメッセージを発せず、財務大臣が日本の財政は破局に近いと評論家的に述べていたものを、いきなり総理が外国の大統領に改革を約束してくるというその姿勢は本末転倒です。こうした森内閣に大胆な施策の実行を期待することは到底不可能です。予算案の審議中にもかかわらず、最近与党が決定した緊急経済対策では、金融検査の弾力化とか実情を考慮しなどと検査に手心を加える趣旨の項目も盛り込まれており、全く整合性がありません。不良債権の抜本処理を進めるには、金融検査をやり直し、厳格な資産査定と引き当てを行わせることが不可欠であります。
日米首脳会談については、二十日付のニューヨーク・タイムズは、邦銀の不良債権処理問題に関して日本側のあいまいな態度が示されたにとどまったと指摘をしております。ワシントン・ポストは、日米間の解釈の食い違いが表面化したと報じ、米高官は、日本が輸出に頼らず、内需拡大に努力をすることで合意したと強調しましたが、日本側はそのような約束をした事実はないと説明したと指摘をしています。
首脳会談において、一体総理は何を約束しているのか、円安誘導に関する発言をなさったのか、また、ブッシュ大統領の輸出に関する指摘に対して有効な反論をしたのかどうか、お聞かせいただきたい。また、「苦い薬は早く飲めば効く」といったようなことを日本経済に関しアメリカ大統領から言われたようですが、反論をしたんですか、首相がどう感じたのか伺いたい。
GDPで世界の四割を占める日米両国の世界経済に対する責任は極めて重いものと言えますが、政策ミスを繰り返し、日本経済をどん底に陥れ、あげくの果てに事実上退陣を表明し、後継者も決まらないままにブッシュ大統領と会談したことは、米国に対し失礼な話であり、遺憾にたえません。死に体の森内閣が小手先の施策を積み重ねても、日本経済が本格的な回復軌道に乗ることは不可能であります。民主党を中心とした政権を一日も早く樹立し、不良債権処理、規制改革、財政再建に取り組む以外に選択はないと考えます。
森総理に経済政策についての質問をすること自体、もはや無意味と言わざるを得ませんが、総理に思うことがあれば、御所見を伺いたいと思います。
民主党は、森総理の訪米、そして訪ロシアに反対の態度を明らかにしています。しかし、総理はロシアのプーチン大統領に会われるようですが、何を獲得目標にしていかれるんですか、その姿勢について伺います。
また、昨日のアメリカの在米ロシア外交官五十人追放へという報道について、政府はどう把握をされておりますか。今後の米ロ関係への影響をどう見るのか、プーチン大統領との会談でこのことをどう触れられるのか伺います。
そして最後に、事実上退陣表明された総理がみずから責任をとれないような国際的な約束はなさらない方がよいという意見を申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣森喜朗君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(森喜朗君)
えひめ丸衝突事故の原因と責任の所在についてまずお尋ねがございました。
米側は、繰り返し本件事故に対する遺憾及び罪の意を表明し、この事故に関するあらゆる責任を有する旨表明しているほか、ファロン特使も、審問委員会における原因究明の結果次第では責任を問われる者もあるだろうが、これらについてはきちんと対処していくと述べられたところであります。
審問委員会は、ワドル前艦長らの証言を得て、二十日午後、結審に至り、証言及び最終弁論を通じて、潜望鏡による確認不足、火器管制員による解析不足及び報告漏れ、当直体制の不備等が明らかにされました。
今後とるべき措置についての勧告を含む委員会としての報告がファーゴ太平洋艦隊司令官に提出され、同司令官がその内容を検討し、措置をとることとなります。
このように、現在、米国は、審問委員会の結果を受けて、原因究明及び責任の所在の明確化に取り組むこととしており、我が国としては、引き続き米側の誠意ある対応を求めてまいります。
えひめ丸事故発生後の私の対応についてのお尋ねがございました。
本件は米国領海で発生した事故であることから、政府としてなし得る措置は、情報の収集と人命救助について万全の対応を図るよう米国政府に要請することでありました。
こうした認識のもと、第一報後、私は直ちに人命救助と情報収集について、米国政府の最大限の協力を確保すべしとの指示を行ったところであります。この指示に基づいて、外務省及び防衛庁のチャンネルで働きかけが開始され、また、内閣官房、外務省、文部科学省の連絡室や対策本部などの体制も構築されたところであります。したがって、私はこの種事案の初動において、総理としてとるべき措置はとったものと認識しております。
しかしながら、事故発生後の私の行動をめぐって、国民から強い御批判のあることは十分承知をいたしており、謙虚に受けとめるとともに、御不快、御不信の念をお持ちの皆様にはおわびを申し上げたいと存じております。
えひめ丸事故から得た教訓は何かとのお尋ねがございましたが、さきにも申し上げたとおり、私は、政府として、この種の事案においては必要な初動措置は講ぜられたものと考えております。
しかしながら、国民の生命、財産を守ることは政府の最も重要な責務であるところから、緊急事態への対応体制等については、今後とも万全かつ十分かどうか不断の点検を行ってまいりたいと考えております。
船体引き揚げの見通し、関係者への補償及び今後の米国との交渉のあり方についてのお尋ねがありました。
政府としては、これまで、引き揚げ及び補償といった今後の課題につき、米側に対し適切な対応を求めてきております。今回の日米首脳会談においても、私から、これらの課題につき米側の努力を要請し、ブッシュ大統領は、できることはすべて行うと述べたところであります。
日米首脳会談後、私はホノルルにおいて御家族とともに事故現場に赴き、御家族のお気持ちを踏まえて、政府として引き続き全面的な支援をしていく決意を新たにいたしたところであります。
本件事故につきましては、主張すべきは主張して、きちっと対応する必要がありますが、同時に、日米関係の維持強化という観点も踏まえて適切に対処していく考えであります。
日本近海における訓練と事故の再発防止につきお尋ねがありました。
我が国周辺海域に設定されている米軍の海上演習場については、日米安保条約の目的達成のため必要なものであると考えております。これらの海上演習場において米軍が航行船舶の安全に影響を及ぼす訓練を実施する際には、米側から事前通告がなされ、これを受けて政府が水路通報等により一般に周知しているところであります。
また、事故の再発防止については、先般、ファロン特使が来日した際に、米軍艦船の航行安全の確保について申し入れたところであり、ファロン特使からも再発防止のために必要な措置をとると述べています。また、二月二十三日、ラムズフェルド国防長官は、あらゆる軍事機器の操作を民間人に許可することを停止させております。
今回のような事故が再び繰り返されないためには、事故原因を徹底的に究明する必要があると考えており、今般の日米首脳会談においても、私よりブッシュ大統領に原因究明等につき努力を要請いたしました。ブッシュ大統領より、できることはすべて行うとの発言があったところであります。
いずれにせよ、政府としては、米側に対し今後とも事故の再発防止を含め、艦船の航行安全に万全を期すよう求めていく考えであります。
今回の首脳会談のねらいについてのお尋ねでありますが、今回の会談は、ブッシュ大統領の就任後初めてのものであり、両国の国民を代表する首脳同士が直接会って、日米同盟関係の重要性を改めて確認した上で、安保、経済、国際情勢の分野における戦略対話を通じた日米同盟関係の維持強化という二十一世紀の日米関係についての基本的な方向性を打ち出すとともに、えひめ丸事故や両国の経済運営を含めた幅広い問題につき意見交換を行うことを主眼といたしました。今回の首脳会談において、その目的は十分達成することができたと考えております。
首脳会談における原潜事故に関するやりとりについてのお尋ねですが、私の方から、えひめ丸の事故は遺憾な事故であったが、米側の謝罪を真摯なものとして受け入れていると述べつつ、引き続き原因究明、引き揚げ及び補償等につき努力いただきたい旨述べたのに対し、大統領から深い遺憾の意が表明され、できることはすべて行う、日本において強い感情があるのはわかっている、御家族のためにも努力したいとの発言がありました。その上で、共同声明において、私と大統領は、日米両国の間の強固なきずなの存在が日米両国が遺憾なえひめ丸の事故のような問題に取り組むことを可能にしている旨確認した次第であります。
日米地位協定及び普天間飛行場代替施設の使用期限問題についてのお尋ねがありました。
日米地位協定の問題については、まずは閣議決定にあるとおり、運用の改善により個々の問題に機敏に対応することが重要であると考えますが、それが十分効果的でない場合には、相手もあることですが、地位協定の改正も視野に入ってくると考えます。かかる考えに基づいて、先般の日米首脳会談で、私より、日米地位協定の運用改善等を通じ日米で協力して沖縄の負担軽減に努めたい旨ブッシュ大統領に述べたところであり、引き続き地位協定に関する諸問題に取り組んでまいる所存であります。
また、普天間飛行場代替施設の使用期限問題については、先般の首脳会談の結果をも踏まえつつ、今後とも平成十一年末の閣議決定に基づき適切に対処してまいるとともに、あわせて、国際情勢が肯定的に変化していくように努力してまいる所存であります。
今回の首脳会談における米国のミサイル防衛計画と有事法制の扱いにつきお尋ねでありますが、我が国は、米国のミサイル防衛計画に関し、従来より、米国が近年の弾道ミサイルの拡散に対処するために外交努力を行うとともに、国家ミサイル防衛計画を検討していることにつき理解するとの立場を示してきています。
今回の首脳会談において、私は、ブッシュ大統領に対しこのような我が国の立場を示すとともに、米国が本件について同盟国及び関係国との間で十分協議する旨表明していることを歓迎する旨述べました。
有事法制については、先般の施政方針演説において述べたように、関係省庁間で協力しつつ検討を開始していくこととしております。これを受け、私は、今回の首脳会談で、ブッシュ大統領に対し、有事法制について法制化を視野に入れて検討を開始していくことにした旨を述べました。
このように今回の会談においては、ブッシュ大統領と安保・防衛問題を含め忌憚のない話し合いを行うことができ、また、日米両国が緊密な対話を行い協力していくことで意見が一致しました。私は、今回の訪米は所期の目的を十分に達成することができたと考えております。
今回の日米首脳会談において何を約束してきたかとのお尋ねでありますが、私とブッシュ大統領の間で意見の一致を見た点は日米共同声明に明確に述べられたとおりであり、経済分野においては、規制緩和、構造改革、外国直接投資の促進の重要性、日米間の対話の強化、WTO新ラウンドの年内立ち上げなどであります。
円安誘導に関する発言があったかとのお尋ねでありますが、為替に関する議論は一切なされておりません。いずれにせよ、円安誘導により輸出主導の景気回復を図るべきという考え方は我が国としてもとより持っておりません。
大統領の各発言に有効な反論をしたのかとお尋ねでありますが、今回の首脳会談の大きなねらいは、個々のやりとりで反論し合うということではなく、我が国の景気の改善に足踏みが見られ、米国においても景気の減速が鮮明になってきているこの時期に、日米両国間でそれぞれ経済政策及び経済運営について首脳レベルで政治意思を確認することにあった次第であります。この点、私は、ブッシュ大統領と今後の日米関係のあり方の基本的方向性について忌憚のない話し合いを行うことができ、極めて有意義な会談を行うことができたと考えております。
経済政策についてお尋ねがありました。
最近の経済状況を見ると、景気の改善には足踏みが見られ、先行きについては、アメリカ経済の減速や設備投資に鈍化の兆しなど懸念すべき点が見られます。こうした中で、引き続き景気に軸足を置いて経済を一日も早く本格的な回復軌道に乗せることが最重要課題であります。このため、平成十三年度予算の一日も早い成立が必要不可欠であると考えております。
さらに、日本新生という包括的なプログラムのもとで、着実に経済のバランスシート調整を進めること、規制改革により新産業の創出、競争促進、教育改革を通じた人的資源の強化など、サプライサイドの政策を進めること、この政策の中核としてIT革命を強力に推進することなどにより、時代を先取りした経済構造改革を実行しているところであります。
また、政府・与党緊急経済対策本部を発足させ、株式市場の需給改善及び活性化策、企業の再生と債権放棄を一体的に行うとの観点に立った不良債権の的確かつ迅速な処理策について、その具体化を早急に検討することといたしております。都市再生の実現や土地等の流動化対策についても、その具体化を早急に検討する必要があるものと考えております。
こうした道筋に沿って適切かつ機動的な政策運営を行うことにより、民需を中心とした経済成長を実現し、日本経済の復活を達成したいと考えております。
私の訪ロについてのお尋ねがありました。
今回の日ロ首脳会談においては、二〇〇〇年までの平和条約締結という目標に向かって両国が全力を尽くした結果を総括し国民の皆様に示すこと、また、それを基礎として、今後の平和条約交渉をさらに進めていく旨、明確に合意することを目標といたしております。
いずれにせよ、政府としては、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの一貫した方針のもと、交渉に取り組んでいく考えであります。
ロシア外交官の追放については、米国政府により既にロシア大使館員四名が退去を命ぜられたと承知しており、引き続き関連情報を収集するとともに、今後の米ロ関係に与え得る影響を注視しております。
なお、日ロ首脳会談において個々の案件をどのように取り上げるかについては、予断を避けたいと思います。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)
〔国務大臣河野洋平君登壇、拍手〕
○国務大臣(河野洋平君)
えひめ丸事故から得られた教訓についてのお尋ねがございました。
外務省としては、本件事故の第一報を受けまして、海外における日本人の安全及び我が国と米国との関係にかかわる重要な問題として直ちに事実関係確認のための情報収集を開始し、判明した情報を逐次、総理、官房長官などに連絡をした次第でございます。
総理が、今回の事案について、政府として行うべきことは、情報の収集と米国の主権下における人命救助について万全の対応を図るよう米国政府に要請することであるとの御認識のもと、これらを外務省に指示されたことは御承知のとおりであります。
外務省としては、本件事故によりまして、このような重要な問題について日本人の安否確認を含む情報収集、分析、関係者への迅速な連絡及びこれらに基づく適切な対応が極めて重要であることを改めて強く認識したところであり、今後ともこれらを徹底していく考えであります。
船体引き揚げの見通し、関係者への補償及び今後の交渉のあり方についてのお尋ねが次にございました。
船体の引き揚げにつきましては、十三日、アメリカ政府は、詳細な計画及び環境及びその他技術的諸問題の解決は依然残されているが、引き揚げに取り組むとの決定を行っており、政府としては、御家族の御要望も踏まえ、引き続き米側に対し引き揚げについてあらゆる手だてを尽くすよう求めてまいりたいと存じます。
補償につきましては、今後本格的に議論されることになると思われますが、米側が誠意ある対応を示すことが重要であり、政府としてできる限りの支援を行っていく所存であります。
今後の米国との折衝方針及び被害者の方々への対策についてお尋ねがございました。
ただいま総理から、ワシントンで行われた日米首脳会談等についての御発言がございました。そのとおりでございますが、本件事故につきましては、御家族の方々の御要望を十分踏まえて、主張すべきは主張し、政府としてできる限りの対応をしていきたいというのが我々の考え方でございます。同時に、日米関係の維持強化という観点も踏まえて適切に対処してまいりたいと存じます。
我が国周辺海域における訓練については、先ほど総理より申し述べた御答弁のとおりでございます。
事故の再発防止につきましては、先般ファロン特使が来日した際、私から、米軍艦船の我が国への入港につき改めて安全を徹底するよう指導願いたい旨申し入れたところであり、ファロン特使からも再発防止のために必要な措置をとるとの発言がございました。また、ファーゴ太平洋艦隊司令官からは、審問委員会の結果が出るまでは緊急浮上のデモンストレーションを制限する旨述べております。
さらに、今回の事故発生の後、日米合同委員会において、我が方より相模湾潜水艦行動区域における航行安全につき要請をしたことに対しまして、米側よりは、日本の領海内における潜水艦の行動の安全は引き続き米海軍の最重要事項であり、日本近海においてその安全確保のために今後ともあらゆる努力が払われ、またその行動及び安全に適用される関係法令は遵守される旨回答がありました。
いずれにせよ、政府としては、米側に対し今後とも事故の再発防止を含め、艦船の航行安全に万全を期すよう求めていく考えでございます。
日米地位協定の問題につきましても、総理が御答弁されたとおりでございますが、現状について一言申し上げますと、先般、私はこの問題について担当者に指示をいたしまして、起訴前の被疑者の身柄の引き渡しの問題について運用改善に取り組むべく、日米間で協議を開始することとなったところであります。
普天間飛行場代替施設の使用期限問題につきましては、先般の首脳会談で、総理よりこれを取り上げたのに対し、ブッシュ大統領より、御承知のとおり使用期限の問題は困難な問題である、この問題は国際情勢に照らして考えていかなければならない、この地域での米のプレゼンスは重要である、普天間の移設問題については引き続き日米間で協議していきたいとの応答があったところでございます。
政府としては、今後とも、平成十一年末の閣議決定に基づきまして、本件に適切に対処していくとともに、あわせて、国際情勢が肯定的に変化していくよう努力をしてまいる考えでございます。(拍手)
〔国務大臣福田康夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(福田康夫君)
えひめ丸事故から得た教訓は何かとのお尋ねがございました。
政府といたしましては、これまで阪神・淡路大震災などで得られた貴重な経験を踏まえて、二十四時間体制の内閣情報集約センターを設置して、緊急事態の初期の段階から必要な情報が官邸に集中され、総理等に迅速に連絡がなされる体制を整備してまいりました。
えひめ丸事故の発生についても、迅速に関係者に連絡されたところであり、これを受けて総理から初動対応について適切な指示がなされ、危機管理担当大臣はもとより、この事案に直接関係された外務大臣及び防衛庁長官においては、米側への申し入れ、乗組員の御家族などへの支援などについて速やかに対応されました。政府として必要な処置が講じられたものと考えております。
これらの緊急事態への対応体制については、今後とも万全を期して、不断の点検を行ってまいりたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣伊吹文明君登壇、拍手〕
○国務大臣(伊吹文明君)
えひめ丸事故から得た反省、教訓についてのお尋ねでございました。
今回の残念な事故は、内閣法十五条に規定をいたしております国民の生命が大規模に危険に侵されるという危機管理対象の事案ではございませんけれども、米国の主権下の原子力潜水艦により引き起こされました我が国の外交、安全保障を揺るがしかねない、日米の信頼関係を損なう可能性を含む重大な緊急事態でありました。
特に、第一報が参りました時点では、すべての乗組員の安全が確認されていなかったことから、私からは、直ちに外務省、防衛庁を通じて、米側に人命救助を第一とするよう強く依頼をいたしました。同時に、総理から同様の御指示をいただいておりまして、初動措置としては間違いのない対応がとれたと思っております。
今後の反省、教訓といたしましては、危機管理の対象であろうと、それに至らぬ緊急事態への対策であろうと、その事態に直面したときには一刻の猶予もないというのが国民の命を預かっている担当者の置かれた立場であるだけに、政治的責任を負う者は、法律や制度を超えて動かねばならない局面があるということが大きな教訓だったと思います。この教訓を大切に、今後の緊急事態の発生に対処するのが私たちの責任であると自覚をいたしております。(拍手)
〔国務大臣斉藤斗志二君登壇、拍手〕
○国務大臣(斉藤斗志二君)
日本近海における訓練と事故の再発防
止についてのお尋ねでございますが、総理から御答弁がございましたように、我が国周辺海域に設定される米軍の海上演習場については、日米安保条約の目的の達成のため必要なものでございます。
一般論として申し上げれば、これら海上演習場において米軍が射撃訓練のような航行船舶の安全に影響を及ぼすような訓練を実施する際には、米側から事前通告がなされ、これを受けて政府が水路通報等により一般に周知しているところでございます。
御指摘の相模湾潜水艦行動区域については、当庁としては、引き続き外務省とも連携して、当該区域での安全確保及び事故防止のため、万全を期すよう米側に求めてまいりたいと考えております。
今回のような事故が再び繰り返されないためには、事故原因を徹底的に究明する必要があると考えており、今般の日米首脳会談においても、森総理大臣よりブッシュ大統領に対し原因究明等につき努力を要請され、ブッシュ大統領より、できることはすべて行うとの発言があったと承知しております。
いずれにせよ、防衛庁としても、米側に対し今後とも事故の再発防止を含め、艦船の航行安全に万全を期すよう求めていく考えでございます。