国税通則法の更正請求期間の延長に関する質問主意書5月14日斉藤つよし 参議院議長 井上裕殿 |
納税者の権利救済の観点から、納税者が更正の請求をすることができる期間を五年以内(現行一年以内)とし、また、後発的理由による更正の請求期間の特例については、一年以内(現行二か月以内)とすることが必要と考えるが、政府の見解を示されたい。 |
税務署からの更正処分のうち、税額を増額するものについては法定申告期限から三年以内、減額するものについては五年以内に期間が制限されているのに、納税者が更正の請求をすることができる期間は、一年以内です。一年を越えたら、納税者からは減額請求できず「嘆願」するしかなく、権利救済の面で好ましくありません。更正を請求できる期間を法定申告期限から五年間とし、この期間になされた更正の請求に係る減額更正については、五年を超えても更正できるようにすべきです。
納税者の権利を保障するために納税者権利憲章を制定することを民主党は方針にしています。
「民主党の税制改革方針」から抜粋国民の監視・異議申し立てを充実させるサラリーマン税制改革の一環として、納税者による更正の請求、異議申し立て、納税猶予などの納税者の地位と諸権利の保障を明確にした「納税者権利憲章」を制定します。また、納税者教育を推進するとともに、脱税への制裁・罰則を強化します。 |
この方針は、斉藤つよしがしつこく内閣に質問と問題提起をしてきた内容が反映されたものです。
税務行政について内閣に次々と質問主意書を提出
斉藤つよしは、次のような質問主意書を、国会法第七十四条によって提出してきました。
国税通則法の改正を(99年の質問主意書より)
日本は税務行政についての適正手続きが法的に整備されていません。税法には、税務調査に関する規定が一条文のみ裁量的に「調査について必要があるときは … 調査できる」(所得税法第二三四条、法人税法第一五三条)とあるだけで、その他の手続き(調査の通知、理由開示、時間・場所、代理人の選任、弁明手続、苦情申立手続など)はなんら成文化されていません。また、税務調査の違法性をめぐって多くの裁判例がありますが、裁判例は我が国の成文法主義の見地から原告納税者に不利なものがほとんどです。平成六年に施行された行政手続法においても、税務行政手続きについては、同法及び国税通則法の規定により広範囲にわたり適用除外となっています。
私は、次のような理由から、国税通則法を改正すべきと考えます。
・申告納税制度を維持させるためには、納税者の協力が必要であり、特に国税通則法を改正して税務調査に関する適正な手続き規定を整備することは、納税者の税務行政に対する信頼を得るものとなる。
・税務行政における適正手続きが未整備であることは、税務行政に必要以上の裁量を期待する結果となり、効率的な行政運営を阻害する。国税通則法を改正して税務行政の適正手続規定を導入することは、効率的な税務行政の遂行に資することになる。
・88年のOECDの納税者の権利に関する報告書等、納税者の権利を保護する観点から税務行政における適正手続を確立しようとする方向は世界的な潮流になっている。アメリカ、ドイツ、フランス、イギリス、カナダ等の諸国では、80年代から納税者の権利保護に関する法制度が急速に整備されてきている。アジアにおいても、96年に韓国の「国税基本法」が改正され、翌年には「納税者権利憲章」が公布された。
我が国の経済社会が急速に国際化している現状において、納税者の権利を含む税務行政手続きの法的整備はまさに急務である。
二 OECDが掲げる納税者の権利保護の基本原理や諸外国の税務行政の適正手続きに関する法制度を参考にすれば、少なくとも次のような内容をもった国税通則法の見直しがなされなければならない。
・納税者は基本的に誠実であり、納税者が提出した申告書は真実であると推定すること(納税者の誠実性の推定)。
・税務調査を行う場合には、調査実施の一四日前までに書面により通知するものとすること(税務調査の事前通知)。
・税務調査に際し、税理士等を代理人とすることができる旨を税務調査通知書等で教示すること(税務調査における代理人選任権の教示)。
・税務調査を行う場合には、調査対象税目、調査を必要とする理由等を書面により開示すること(税務調査の理由の開示)。
・原則として個人の住居において調査を行うことを禁止する。また、税務調査においては納税者等のプライバシーを保護すること(税務調査におけるプライバシーの保護)。
・税務調査が終了した場合において処分を行わないときは、速やかに書面によって調査終了を通知すること。また、税務調査に際して行政指導を行う場合には書面によって行うこと(調査終了の通知)。
・同一税目で同一期間に関する再調査を行うことは原則としてできないものとすること(重複調査の禁止)。
・手続規定に違反して行われた税務調査に基づく処分は無効とすること(違法調査の無効)。
納税者の権利保護が不十分な政府答弁
99年年12月に提出した納税者の権利保護を明確にするよう要求する内容の質問主意書「税務行政の適正手続の法的整備に関する質問主意書」に対して、2000年1月に政府答弁がありました。「アメリカは斉藤が言うほどには納税者の権利を認めていないし、仮に諸外国が認めているからといって日本がそうする必要はない」という答えでした。斉藤つよしは、5月29日に再度同趣旨の質問主意書を提出し、アメリカの納税者権利保護の実態と、世界的な権利保護の流れを受けて、具体的に法改正の必要性を主張しました。しかし、6月20日の政府答弁はその必要はないという後ろ向きの回答でした。この問題は今後大きな問題になっていくことでしょう。
こうした経過をふまえて、更正請求期間について、今回質問しました。