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参議院予算委員会質疑
(2002年5月27日)
- 斉藤 勁
東京地検特捜部が5月23日、政治資金規正法違反(虚偽記載)の容疑で、鈴木宗男衆議院議員の自宅や議員会館事務所などを家宅捜索したことについて、総理の所見は。
- 小泉総理
議員として国民から信頼を得られるような活動を平素からしていくことが必要だと思う。
- 斉藤 勁
法務大臣、国会開会中に国会議員の自宅、議員会館事務所が家宅捜索を受けたケースは過去にあったか。
- 古田刑事局長
過去に例はあるが、その具体的内容、件数等について把握していないので詳細はお答えしかねる。
- 斉藤 勁
鈴木議員の議員辞職について、総理は本人の問題だと何ども答弁しているが、国民が求めているのは鈴木議員の速やかな議員辞職、そして衆議院での再度の証人喚問、議員辞職勧告決議案の速やかな本会議上程だと思う。この件に関して、総理・総裁としてのリーダーシップについて総理の所見は。
- 小泉総理
議員の出処進退については、かねがね申しているように本人自身が決めるべきものだと思っており、この考えは今も変わっていない。
- 斉藤 勁
鈴木議員は比例区で当選しており、自民党を離党したからそれでいいと済まされるものではない、というのが国会のみならず国民の声だ。比例区選出の議員であるからこそその出処進退については、総理・総裁のリーダーシップがあると思う。
- 小泉総理
議員が政党を離党した場合の扱い、政党がなくなってしまった場合の議員のあり方について今後議論していく必要があると思う。
- 斉藤 勁
官房長官は辞めるべきだというニュアンスで記者会見に応じたようだが。
- 福田内閣官房長官
一般論として、この選挙制度、比例代表の扱い、今のような事例が起こったときにどうするか、そのことについて選挙制度はやはり不備なのではないかということを申し上げた。断定的に申し上げたわけではない。
- 斉藤 勁
鈴木議員の議員辞職問題は今後の重要法案審議に影響を与えるのか。
- 小泉総理
重要法案審議に影響を与えないようにしてほしいと自民党執行部に要請しているところだ。
- 斉藤 勁
会期延長は全く考えていないということでよいか。
- 小泉総理
現時点では考えていない。
- 斉藤 勁
通常国会の会期は150日間と決まっている。決められた会期で終わり、あとはまた出直すのが憲政の常道だ。それができないのなら衆議院を解散すべきではないか。
- 小泉総理
現時点での解散・総選挙は全く考えていない。解散せずにできるだけの法案を成立させていく。改革路線を軌道に乗せて、構造改革を進めていく。
- 斉藤 勁
在藩陽総領事館事件で我が国の人道面における国際社会の信頼は地に墜ちた。終始中国ペースでことが運ばれたのではないか。我が国外交の脆弱性、事実上の全面譲歩となった日中間の国際法上の問題点等々、決してこの問題が解決したのではないと思う。亡命希望者5人の中国出国が実現したところでの総理の率直な感想は。この問題で我が国外交は十分機能したのか否か。
- 小泉総理
5人が開放されたのは、日本側の譲歩でも何でもなく、むしろ日本側の主張、人道上配慮して開放すべきだという主張を中国側が重視した結果だと思っている。領事館に対する不可侵権の問題等、いろいろ中国側と日本側の主張には開きがあるが、今後、そういう点についてはさらに中国側と交渉を進め、このような事件が起こらないよう、再発防止策等についても話し合っていく必要があると思っている。
- 斉藤 勁
中国政府による5人の出国に関しては、5月21日深夜に中国側から事前通報が行われたそうだが、誰から誰にあったのか。通報の具体的内容は、通報をただ受け入れただけなのか、我が国の関与はどの程度行われたのか。
- 川口外相
通報は21日の夜、北京時間の11時頃に中国外交部から北京の我が国大使館に対しあった。内容は関係者5人を22日中に第三国に出国させるということと、その手配が韓国政府によって行われるという2点だった。この中国からの事前通報後、中国、韓国および最初の出国先とされていたフィリピンとの間で5人の移動のために必要な連絡や調整を行った。
- 斉藤 勁
5人が韓国に着いた際に寺田大使が接触したとの報道があるが、いかなる対応をしたのか。
- 田中アジア大洋州局長
5人は23日の午前4時前に韓国の仁川空港に到着した。寺田在韓国大使が出迎え、無事韓国に到着したことをねぎらい、安寧な生活を送られることをお祈りするという日本政府としてのねぎらいだった。
- 斉藤 勁
この間、日本政府は5人の身元確認、亡命意思の確認をすることができなかった。日中間で残る課題は、中国側の陳謝、再発防止の保証になると思うが、この間の状況を見ると厳しいと言わざるをえない。これからどういった交渉を総理はしていくつもりか。
- 小泉総理
日本の不可侵権の問題、再発防止策、さらには日中友好という大局的見地、冷静に慎重に毅然と対処していく必要がある、しっかりやってくれという指示をした。
- 斉藤 勁
総理の答弁は抽象的で、我が国の主体的な外交というものが感じられない。武装警察に連行された北朝鮮住民と思われる5人のうちの1人が警察詰所で亡命希望のメモを示したが、副領事は亡命の意思を確認することなくその場で返却した。これが外務省の調査結果に記載されないまま中国側から報告された。これはその後の中国と我が国の交渉の中でどれほどマイナスになったのか、計り知れないと思う。中国課長は、この事実を上司に報告することなく握りつぶしたということになっているが、その後この点について外務省内でいかなる事実調査が行われたのか。
- 川口外相
お尋ねの英文の手紙は本来、受け取った方がよかった、受け取るべきであったと思う。ただ、このことが日本と中国との間の交渉で問題になったかというと、私はそういうことではないと思っている。中国に対して我が国が言っているのは同意があったかどうかということに関してであり、私どもの主張は一貫して同意がなかったいうことであり、手紙を受け取った、受け取らないにかかわらず同意はしなかったということには変わりはない。そういう意味では、本来我が国がずっとしていたウィーン条約関係の主張には影響はない。英文メモについては、調査結果を発表した当日に現地から担当課に対して報告があったが、報告書は同意があったかどうかということについて記述しているということなので、担当課長のところで報告に含める必要はないと考えたということであり、これを隠そうとする意図はなかったと聞いている。しかし、このことが上司に報告されなかったということについては、遺憾であったと思うし、強く反省を促したい。
- 斉藤 勁
今回の問題は、地域問題に発展する可能性もある。中国、日本、韓国の二カ国間、三カ国間で真剣な対話を行っていかなければならないと思うが、総理、外相の見解は。
- 川口外相
中国、韓国など関係国との考え方、立場が違うので、国際的な枠組みを作っていくことは必ずしも容易ではないが、今回の問題は北東アジア地域全体にとって重要な問題であり、関係国との間で二カ国間の話し合いをしていくことは重要だと思う。関係国が集まって議論をしていくのは有益ではないかと思う。
- 斉藤 勁
不可侵権について総領事館と大使館ではどのように異なるのか、違いあるとすればどのような考え方に基づくのか。
- 海老原条約局長
不可侵権の違いは、大きく分けて二点ある。一つは、不可侵権の対象は、大使館の場合は制限がないので、大使館全体になる。領事館は、ウィーン条約三一条に明記されているが、専ら領事機関の活動のために使用されている部分ということで、そうでない部分があり得る。官憲等の立ち入りについては、大使館の場合はいかなる場合も大使館の長、通常は大使の同意が要ることになっている。領事館の場合は、長等の同意ということが原則にはなっているが、火災というような迅速な保護措置が必要な場合は同意があったと見なされる。考え方については、大使館と領事館の任務の違いだと思う。大使館は国を代表してその政府と交渉を行うことが一番の任務で、領事館はこのような交渉は行えない。主として自国民の保護あるいは通商上の利益の増進というようなことで任務が限定されているので、任務の違いに応じて不可侵権の内容も異なってくる。
- 斉藤 勁
総領事館の建物や敷地のうち不可侵となっている部分、中国側我が方の同意なしに立ち入ってはならない範囲は具体的にどこまでか。
- 海老原条約局長
不可侵権の対象となる部分がどの部分であるかは、それぞれ個別的な例に沿うので一概には言えない。少なくとも正門とか土地、構内というものについては、ウィーン条約一条の1により不可侵の対象となる。査証の待合室は、査証発給業務という典型的な領事業務を行っている場所であり、条約の不可侵権の対象になっている。この点については中国側との間で相違はない。
- 斉藤 勁
総理、今回の問題は、地域的、外交的問題であり、外交にきちんと照らしながら冷静にやりとりをしていくべきではないか。
- 小泉総理
その通りだと思う。
- 斉藤 勁
総理はわが党の調査団の調査結果について、自虐的だと言ったが、その考えは今でも変わりはないか。
- 小泉総理
発言を撤回しろというのは、言論の自由をどう考えているのか。人を批判するのは自由だが、自分が批判されたら怒って、その発言を撤回しろということ自体考えられない。
- 斉藤 勁
わが党の調査団について、どういうメンバーと調査したのか、どういうことをしたのかを聞かない時点で総理は発言された。わが党の調査団は、我が国の国益の立場に立って、国際的な友好の立場に立って調査をしてきた。総理は、自分の発言を撤回するのがいやなら改めてはどうか。
- 小泉総理
中国と今大事な交渉をしているときに、中国の言い分が正しくて日本の言い分は間違っているということは、慎んでもらいたい、これは自虐的、自虐主義じゃないかと言ったのであって、それについてけしからんというのは言論の自由だ。今までの発言を撤回する気は全くない。
- 斉藤 勁
アジア女性基金の償い金支払い事業の終了を受け、今後政府はどのように戦時性的強制被害者問題に取り組んでいくのか。
- 福田内閣官房長官
基金はインドネシアにおける事業を除いて元慰安婦の方々を対象とした事業の申請受付を終了したが、政府はこの問題について、各国の国内状況も十分踏まえつつ、今後とも大きな関心を持って対応してまいりたい。
- 斉藤 勁
継続審議になっている戦時性的強制被害者問題解決促進法案を提出した民主党、共産党、社民党の野党三党は、被害者の方たちを招いての参考人質疑を求めている。政府は、直接、被害者本人たちの声を聞くべきだと思うが。
- 福田内閣官房長官
政府としてもこの問題に対する我が国および国民の誠意がえられるよう、今後とも引き続いて最大限の努力を払ってまいりたい。
- 斉藤 勁
この問題は、国民の総意を代弁する私たち国会議員として取り組むべきだと申し上げさせていただく。
- 斉藤 勁
徳島県の社会福祉法人健祥会、緑風会、健祥会グループに対しきちんとした調査をすべきではないか。健祥会グループの急成長、中村博彦理事長と鈴木宗男代議士との関係、グループ内での不当労働行為、残業代未払い問題、中村理事長の政府審議委員就任などについて、政府としても積極的な解明をすべきだと思うが、厚生大臣の所見は。
- 坂口厚生労働相
今後のことについては徳島県ともよく相談させていただきたい。
- 斉藤 勁
健祥会グループ問題について、政府は徹底調査をお約束していただけるか。
- 小泉総理
調査いたします。
(参議院記録部作成の会議録情報をもとに編集。文責・斉藤 勁事務所)